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会社名(商号) | 株式会社いなげや |
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URL | https://www.inageya.co.jp/ |
設立年 | 1948年5月 |
資本金 | 89億81百万円 |
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従業員数 | 10,067名(正社員:2,002名)(2024年3月末現在) |
事業内容 | 武蔵村山 精肉プロセスセンター |
株式会社いなげや |
生鮮・惣菜戦略統括部精肉部 部長 佐藤 兼太朗様 |
生鮮・惣菜戦略統括部精肉部 精肉製造グループ リーダー 栃尾 勝様 |
Q御社センター内の課題は何だったのでしょうか?
栃尾さん「2023年3月に着任した当時は、現象面の応急処置的な課題対応に追われ、根本的な解決に至らない課題が安全、品質、生産面において見受けられました。その時、精肉センター従業員が同じ方向を向き、課題を解決する為には、仕組みによる変革と挑戦が必要と感じました。」
Q仕組み化とは具体的にどのような内容でしょうか?
栃尾さん「人財育成を生産性向上に繋げる仕組み化に取り組みました。まず、精肉センターにおける業務の棚卸しと環境整備を実施し、個人別の職務階層に応じた役割と責任を明確にしました。次に、安全衛生教育を継続して実施した上で、作業工程のマニュアルを作成し、平準化及び標準化された品質を維持し、作業に人をつける作業割当の仕組み化を実現することができました。その中で工夫した点は、属人化=人に引き継げないやり方を避ける為、正しいやり方の共有化に力を入れ、正しいやり方に対して「わかる」「できる」「教えられる」の3段階の習熟度で区分し、全員が作業を「できる」レベルになるように取り組みました。人財育成の成果を最大化する為には、製造機械のトラブル等による生産を止めないことが重要になります。現場をよく見てみると生産が止まる真因が、製造機械の不具合が起きてから対応する準備と確認不足、運用管理不備であることに気付きました。そこで、製造機械の一斉点検と修繕を実施する一方、部品納品のリードタイムによる生産停止リスクを無くすため、在庫部品個数の定量化をし、点検と修繕を定期的に実施する仕組みを取り入れました。効果として、日々の突発的な不具合による生産中断と修繕費を大幅に削減することができました。業務改善、仕組み化を進めていく中で、経営理念、施策を具現化する今後の精肉センターの在り方を考えるようになり、中長期的な生産計画、投資計画が不可欠であることを実感しました。」
QRP-001(自動盛付ロボット)の導入のきっかけ、動機は何でしょうか?
栃尾さん「中長期的な取り組み課題として省人省力化は頭の中にありましたが、中途半端に進めると機械に頼り、機械を最大限使いこなせないリスクがあると考えておりましたので、まずは先述した人財育成を通した生産性向上の限界へ取り組むことにしました。従業員の高いモチベーションと実行力により、省人省力化機械を投資する前に、過去最高の生産性数値を出すことができ、従業員皆で喜びあったことが今思うとターニングポイントだったと思います。人財育成により向上した生産性を更に上げる為には、人が現状100%実施している「スライス盛付工程」を機械化することが不可欠と考え導入を決意しました。」
QRP-001を導入していかがだったでしょうか?何か変化がありましたでしょうか?
栃尾さん「まず、導入前に従業員に対して目的と効果を踏まえた中長期生産・投資計画を説明しました。ここが大きなポイントですが、導入に伴い製造機械の作業場レイアウト変更を私が決めず、従業員で時間をかけて議論し、話し合って決めたことにより、主体性とモチベーションが高まり、より自分事として『考働』できるようになったことがとても嬉しかったです。現在では、豚肉の「うす切り(ロース)」「生姜焼き(ロース)」「しゃぶしゃぶ」用途の商品化を自動盛付ロボットが担っています。」
QRP-001の盛り付け品質はいかがでしょうか?
栃尾さん「店舗でも使用している丸刃スライサー・プロセスセンターでのAZ-342機械の盛付工程において、人の手でトレーへの盛付をしている為、鮮度感、綺麗な折り目、均一な鱗列化に課題がありましたが、盛付をロボットで自動化することで、一気に課題が解消され、生産性も向上し非常に評価が高いです。」
QRP-001の操作についての習熟度はいかがでしょうか?
栃尾さん「操作は約2日間で習熟でき、今では10名の担当者が操作できるようになっております。主に、日本・中国・ネパールの出身の方が操作しています。」
QRP-001には、スライサーの機種にもよりますが、現在7種類の盛付ハンドがあります。今後RP-001の活用で、盛付についてやってみたいなというニーズはありますでしょうか?
栃尾さん「現在、「鱗列用ハンド」と「ハーフバラ横折用ハンド」で豚肉の「うす切り(ロース)」「生姜焼き(ロース)」「しゃぶしゃぶ」用途の商品化をしております。次の段階として売上構成比が高い「うす切り(バラ)」をAXY-302で切り、それらの肉を自動で両折してトレーに盛付してくれる「フルバラ横折バンド」の導入を考えています。」
Q現在、RP-001の前工程に連結されているスライサーは、AZ-342の定量スライスユニットで、指定グラム±10%精度91%の特徴を持っていますが、グラム精度についてはいかがでしょうか? グラム調整を行う手直しの方の省人化を狙った機械ですが、状況はいかがでしょうか?
栃尾さん「グラム精度の点でいえば概ね許容の範囲内で推移しており、グラム調整も必要ありません。ただ、AZ-342の機械の両サイド2名で盛付け時に確認していた原料切り出し時の端材除去や原料、AZ-342由来の商品化不具合の手直しとして人員1名は必要です。今後、盛付機械ロボットを複数台導入した場合、2台導入で、機械両サイド2名×2台分の4名を削減し、1名の手直し担当で行うことができ、合計3名が削減されますので、盛付機械ロボットの複数台導入が更なる生産性向上の役割を果たすと確信しております。」
QRP-001を導入して懸念している点はありますでしょうか?
栃尾さん「自動盛付ロボットの性能は高いレベルでの必要十分の領域にあると考えております。盛付に不具合がある場合は、原料の肉質に課題がある場合が多いので、肉質の締まり等が良くない原料でも綺麗に折れるスライス技術の向上に期待をしております。機械の稼働状況を平井カンパニーさん、日本キャリアさんと今後も共有化しながら改善できたらと考えております。」
Q今後、将来における商品化の変化、それに伴うプロセスセンターの運用構想及び食肉加工機械へのニーズがあれば、教えて頂けますでしょうか?
栃尾さん「我々精肉プロセスセンターはバイヤーが作った商品を安全かつ高い品質で製造し、店舗を通じてお客様へ届けるという大切な使命があります。今後、お客様の生活、食のニーズが多様化していくなかで、食肉業界を取り巻く環境も人手不足、人件費、飼料や原料の高騰、物流課題等々、年々厳しくなっていくのも事実です。その為、プロセスセンターに製造を集中させ全体最適で原資の確保と再分配をし、営業利益拡大に取り組む流れが加速する可能性があります。これからはバイヤーの商品構成においてプロセスセンターで製造するアイテムの工程、アイテム数を見直し多品種少量生産から少品種大量生産の方向性を強め、低コストで運用できるプロセスセンターを目指す必要があります。加えて、衛生管理が行き届いたプロセスセンターで製造している強みを、お買い場の活性化につなげたいです。例えば、お買い場の販促物にQRコードで自動盛付ロボット動画をアピールしたり、「武蔵村山精肉プロセスセンターでは自動盛付ロボットが活躍しています」のPOP(※)を取り付けて鮮度や品質を訴求したいと考えております。近い将来のプロセスセンターの製造機械には「歩留とスピードの両立」と「機能の集約とコンパクト化」を求め、更なる機械化を進め省力省人化に繋げます。作業場レイアウト上では「有人エリア」と「無人エリア」を明確に分け作業の簡略化と平準化を進め、稼働時間の短縮を進めていきたいと考えております。」
※店舗に設置される広告や展示物